認知症の人のふれあいは、
テキストよりも
講義よりも、
直にことばを丁寧に聴かせていただくと、
言葉にならない内的な感情を道連れに多くの現実的な学びをいただける。
・
手をつなぎ
言葉を探り
奥から絞り出すように出された
Aさんの分身を
一言も漏らさずに
聴かせていただこうとする
互いの力が引き合うと
ショートでお泊りのAさんから
たくさんの言葉があふれだした。
・
しかし、
その重厚な言葉を受ける自分は
届ける言葉が妙に軽く
もう一人の自分から
「違う!届ける言葉を考えろ」と
思い知らされる時間をいただいた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
・
一番つらいのはね、無視をされることなんだよ
・
あのね、
頭がはんかくさくなったの。
いや、
はんかくさいなんて言うもんでないんだ。
全部が、はんかくさくなったの。
・
あねの、
ほら見てごらん、空に雲がかかっているしょ
あの空のようにね、
頭が曇っているんだよ。
・
でもね、
そのことが
どうにもならないほど辛いっていうほどではないんだ。
でもやっぱり変なんだよね。
一番辛いのはね、どうせ言ってもわからんからと無視されることなんだ。
これが一番つらい。
わからんけど伝えてほしい。
・
向こうから声をかけてもらえると
あっ、
知っている人なんだと嬉しくなるんだ。
誰を知っていて
誰を知らないかがわからないんだ。
・
あーきれいだねー
北見の桜の花をぜーんぶ見せていただいたみたいだ
うれしいねー
うれしいねー
今日はいい日だー。
・
ねー
こんな風にね
うれしいなー
きれいだなーと、思う感情はね、あるんだよー
・
自分がこんなふうになるんだったら
もっとしておくことがあったよー。
そうねー
子供等の為に書き残すのも一つかもしれないねー
・
私はあなたと
こんなふうになってしまってからであったから
あなたに
何もお返しができない。
名前を教えてね
紙に書かなきゃね
・
あなたはいい人だと顔に出ているよー
優しさが出ているよー
・
いやーそれは仕方がないよー
仕事をする上ではね、
嫌なことも言わなきゃ
規律がとれなくなるんだよー
・
あらー
お花がぜーんぶ咲きだしたわねー
きれいねー
ほんとうにきれい
・
わすれるのに・・だんだん悲しくならなくなるのは
あの世に行くときに
行きやすくなるもねー
・・・・・・
きっと
そのようにしてくれているんだねー
教育歴も高く
裁判所の調停委員の奉仕もされていたAさんは認知症という病気の症状を語っていただけました。